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九鬼祭とは

奈良県の南東部・奥大和エリアにある天川村に位置する洞川(どろがわ)は、大峯山の麓に広がる秘境として知られています。この地は役行者(えんのぎょうじゃ)を開祖に、7世紀後半から修験道の聖地として1300年の歴史を刻んできました。洞川には役行者の従者である鬼の夫婦、前鬼(ぜんき)と後鬼(ごき)の伝承があり、その像が地元の龍泉寺で厳かに祀られています。特に後鬼にまつわる物語は、後鬼の子孫と言われる洞川の人々によって、今もなお生活の中に語り継がれています。しかし、戦後洞川地区で発生した2度の大火により、この土地の歴史を物語る資料などの大部分が焼失したため、数々の出来事が謎に包まれたままとなっています。

「鬼」の定義について考えると、民話に登場する「鬼」は、人外のキャラクターの属性が強くありますが、民俗学的には、人知を超えるもの、非日常性、異能、霊性、神性などを象徴しています。「ほかと違う単体」「アウトロー」などという意味で「鬼っ子」のようにも使われる言葉でもあり、また、人工でないものという意味合いからは、「鬼」の本質は自然、超自然のエネルギーそのものとも言えるでしょう。

 

九鬼祭(くかみまつり)は、このような背景から生まれたオリジナル・ストーリー『九鬼物語』をベースに、地域協創型の芸術祭として開催されます。企画の構想段階から詩人・谷川俊太郎がプロデューサーとして関わり、「鬼」に扮する9名のアーティストに言葉を託しました。「鬼」たちは、その詩文を発想の核にして、洞川で生活を営む方々と協働し、滞在制作を経て生み出された作品を発表します。また今回制作された作品たちは、創作パートナーの皆さんの了承を得て九鬼祭終了後も洞川に残し、土地や人々と未来に向かう時間を共にしていきます。

 

本企画は、2021年の「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」天川村エリアに参加したアーティストたちが洞川に魅了され、洞川の人々との関わりを持ち続ける手段として九鬼祭を構想し、自主企画として立ち上げました。九人の「鬼」と洞川の人々が繰り広げるお祭りが、新たな伝統となり、洞川文化の伝承に貢献し、洞川エリアの観光促進に少しでも寄与できることを願うものです。

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